Special Feature
2024.06.18
羊文学という「庭」を耕す庭師たちの物語──「"ひみつの庭" inspired by 羊文学 - 12 hugs (like butterflies)」haru.インタビュー
2024年5月、オルタナティブロックバンド・羊文学のオリジナルアルバム『12 hugs (like butterflies)』をモチーフにした展示、「"ひみつの庭" inspired by 羊文学 - 12 hugs (like butterflies)」が開催された。ディレクションを務めたのは、羊文学のアートワークを多数手がけ、今回のアルバムのジャケット制作も担当しているクリエイティブディレクター・haru.(HUG inc.)。アルバムに収録された12曲の楽曲をもとに、7組のアーティストとのコラボレーションによって生み出された作品群は、音楽を自由に解釈し表現することの可能性を示している。「庭」というコンセプトの意図や、展示に込めた思いについて、haru.に話を伺った。
羊文学は「同じ時代を生きる同世代」
──まずは、haru.さんと羊文学の関係について教えてください。
haru.:8年前、私が上京したばかりの時に、メンバーの(塩塚)モエカさんが対談相手として私を呼んでくれたのが最初のきっかけです。その時の羊文学はまだインディーズで、ライブハウスの規模も小さかったと思います。それからしばらく経って、『若者たち』というアルバムでジャケットのデザインを依頼してもらったんです。その後も同じように何度かアートワークに関わらせてもらって、今に至ります。
プライベートな話をたくさんするほど親しい距離感ではないんですが、制作のタイミングでそのつどがっつり話したりはします。ずっと近くで見てきたというか、「同じ時代を生きている同世代」という感覚ですね。
──そんなharu.さんからは、羊文学のこれまでの歩みはどう見えていますか。バンドの規模も、当初に比べると大きくなっていると思いますが。
haru.:「ずっと自分たちに正直に活動しているな」と思って見ています。羊文学のみんなは、「こういうことがつらい」とか「こういう世の中ってなんかしんどいよね」とか、自分たちの心のなかにある痛みをあんまり隠そうとしていないのが良いなって。
でも、ずっと同じというわけでもないんですよね。前回のアルバム『our hope』でもジャケットを作らせてもらったんですけど、当時はコロナ禍で内にこもる空気があったのもあり、「外の世界に向けてシグナルを発したい」という気持ちがバンドとしても強かったんですね。だからジャケットも、「車の窓から女性が外を見ている」構図になっているんです。
でも今回の『12 hugs (like butterflies)』は「バタフライハグ」、つまり「自分自身をハグする」ことをテーマにしているので、「自分の内側で起きていることに対峙する」というニュアンスがあります。彼女たちが考えていることをそのつど汲み取りながら制作していかなきゃ、というのは常に意識しているところです。
──展示会場ではharu.さんと羊文学とのトークが聴けるようになっていますが、そこでも今回のアルバムについて会話がなされていますよね。「自分のなかにあるちょっと攻撃的な部分」も隠さずに出そうとした、というお話が印象的でした。
haru.:「自分を大切にする」って本当に難しいことだなと思うんです。余裕がないとできないことだし、自分のなかのネガティブな感情に対して嫌気がさすこともあるし。でも、そういうのも全部引っくるめて「仕方ない」「そんなもんだ」って受け入れられたらいいよね、という話はみんなでよくしていましたね。