Special Feature

2024.06.18

羊文学という「庭」を耕す庭師たちの物語──「"ひみつの庭" inspired by 羊文学 - 12 hugs (like butterflies)」haru.インタビュー

バンドをとりまく人々の物語

──今回の展示のコンセプトである「ひみつの庭」について、あらためて教えてください。

haru.:羊文学というバンドを「庭」に、それを耕すスタッフやクリエイターたちを「庭師」に見立てて展示空間を作っています。コンセプトについて考えていた時期に、ちょうどフランスの庭師であるジル・クレマンの『動いている庭』を知って、「庭」って良いテーマだなと思ったんです。

庭は庭師が手入れをして育てていくものですけど、ちょうどバンドも庭みたいなものだなって。メンバーやクリエイターたちが庭師として、そこに日々手を加えていくわけですよね。でも完全に人間の思い通りになるわけでもなくて、たまに嵐が来て全部ぐしゃぐしゃになってしまったりもする。それでもまた、みんなでなんとか耕していくことで未来に繋がっていく。そういう営みの全体を、「ひみつの庭」というテーマに込められたらと思っていました。

あとは、私自身もともと「縁側」が好きで、庭もそれに近い空間だなと感じたんです。家の中ほどパーソナルな空間ではないけど、道路や広場みたいに完全な公共空間でもない。その中間的なあり方がちょうど良いなって。

──そもそも、今回の展示はどのような経緯でスタートしたのでしょうか。

haru.:昨年末にNew Galleryさんからお声がけいただいたのがきっかけです。アルバムを元に展示を作ってほしいと言われたときは、本当に悩みました。アルバム自体はすでに完成した作品なので、それを元に何を作れば良いんだろうって。

でもあらためて考えると、アルバムのジャケットも、楽曲という完成品に対してクリエイティブを作る行為なので、今回の展示と同じなんですよね。私はいつも、「その音楽に一番似合う衣装を着せよう」と思ってジャケットを作っているんですが、展示も同じように作ればいいんだと気付いたんです。そこから、「羊文学を取り巻く庭師たちの物語」というテーマが見えてきました。

──展示の具体的な内容はどのように考えていきましたか。

haru.:アルバムに収録されている12曲それぞれについて、自由に解釈を膨らませて作品を作っていこうというのは決めていました。モエカさんが書いてくれたライナーノーツを読みながら考えていったんですが、やっぱり完成している楽曲に対して何を作ればいいんだろう、というのが難しくて……。何度も何度もHUGのメンバーと会議を重ねました。

──今回、来場者の方に配布される小冊子のなかで、haru.さんが楽曲からイメージした言葉や絵が実際に収録されていますね。

haru.:これはそのまま、各アーティストさんにお願いする際のラフにもなっていました。空間を面白くするにはどうしたらいいかという観点で考えていったら、髪の毛の生えたバットや竜巻みたいな、かなり飛躍したアイデアが色々と出てきてしまって……受け入れられるか心配だったんですが、幸いメンバーのみんなは面白がってくれました。

──ある意味二次創作的でもありますよね。

haru.:そうですね。なので、ファンの方々にどう受け止められるかというのは本当に不安でした。でも、私の解釈はあくまでも一例にすぎないので、「こんな自由な聴き方があっていいんだ」って思ってもらえたら嬉しいです。

Exhibitions

"ひみつの庭" inspired by 羊文学 - 12 hugs (like butterflies)
2024.5.30 thu - 2024.6.23 sun
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