Special Feature
2024.06.18
羊文学という「庭」を耕す庭師たちの物語──「"ひみつの庭" inspired by 羊文学 - 12 hugs (like butterflies)」haru.インタビュー
7組のアーティストとの共同制作
──7組の参加アーティストと、それぞれの作品について教えてください。
haru.:Avaさんは台湾のアーティストの方で、アルバムのジャケットでモエカさんが着ているビーズでできた服を作ってくださいました。今回は、その服をそのまま展示しています。1個ずつビーズを紡いで作られていて、作品が作られるまでに積み重ねられた時間みたいなものを感じられるところが良いなと思っています。
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Nico Perezさんにはジャケットの撮影をしてもらいました。実はNicoとはオフィスも一緒で、色々なプロジェクトをともに手がけています。今回のジャケット撮影はプライベート性が高かったんですが、Nicoが真摯に向き合ってくれたおかげで安心して撮影を進められました。
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Christopher Lodenさんはもともと知り合いの作家さんで、今回は「Hug.m4a」と「人魚」の作品をお願いしています。「Hug.m4a」はアルバムの1曲目の楽曲で、iPhoneで録音されています。なので実際に会場でもスマホから聴けるようにしたいなと思って、Lodenさんに装飾をお願いしました。
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「人魚」は、私が作品から連想した「人魚の涙が蜘蛛の糸にかかっている様子」を実際に作品化してもらっています。
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いけばな草月流師範のアレキサンダー・ジュリアンさんには、展示空間の植栽をお願いしています。私の拙いラフから、ほとんど自由演技のような形で「庭」を再現してくださいました。植栽は会期中にも少しずつ変わっていくので、そこもぜひ楽しみにしてほしいです。
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konomadさんには、私が「countdown」から連想した「三つ編みのついたバット」を制作してもらいました。モエカさんのライナーノーツを読んだときに、「バットを振り回して自分自身のことも傷つけてしまう女の子」のイメージが浮かんで、それを具現化してもらった形です。konomadさんがアドリブでバットに絆創膏を貼って「怒っている感じ」を表現してくれていて、「私の意図が伝わってる……!」と感じて嬉しかったですね。
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finaleflwrさんは学生時代から一緒にマガジンを作っている友人で、卒業後に花屋さんをしています。今回は「つづく」から連想した、竜巻のようなモビールを作ってもらいました。最初に「竜巻を作りたいんだけど」と依頼した時には「え?」という反応でしたが(笑)、架空の植物たちが風で舞い上がっているカオスな状況をうまく再現してくれて、とても気に入っています。
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DODIさんは以前イベントでご一緒したことがあるクリエイティブチームで、今回はもともと設営で入っていただく予定でした。でも企画を見せた時に「庭、いいですね」と盛り上がって、結局小屋や扉・おばけの作品などいろいろなところでサポートいただいています。
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──ありがとうございます。haru.さんのラフをもとにしつつも、それぞれのアーティストの方々の解釈がかなり加わっている印象です。
haru.:そうですね、実際にはディテールはほとんどお任せしています。私の妄想のようなラフをもとにみなさんが動いてくださっていて、ありがたすぎる気持ちと怖い気持ちの両方がありました……。
──キービジュアルについても教えてください。
haru.:アルバムのタイトルが『12 hugs (like butterflies)』なので、蝶を使おうというのは考えていたんです。当初「扉」をモチーフにしようと思っていた時期もあり、そこで「蝶番」のアイデアが出てきました。
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撮影については、扉からの連想で「未来の可能性を表現したい」と考えていた時に、HUGのメンバーがサイアノタイプ(日光で印画する青写真)を使うアイデアを出してくれました。最終的には、サイアノタイプで出した写真をさらに撮影して仕上げています。
──今回は来場者が持ち帰れるグッズがたくさんあるのも特徴的だと思います。なぜこのような形にしたのでしょうか。
haru.:楽曲や展示空間を思い出すきっかけになるものを、何かしら持ち帰れたらいいなと思ったんです。たとえばインセンス(お香)の香りを家で嗅いだら、会場で流れていた楽曲を思い出せたりするかもしれない。そうしたら、楽曲に新たな体験の思い出が紐付きますよね。そうなったら面白いなと思って。
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あとは、植えると植物が生えてくるシードペーパーだったり、燃えたらなくなってしまうマッチだったり、「形が変わるもの=変化をもたらすもの」を持ち帰るのもひとつの体験として記憶に残るかなと思ったんです。
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